上川「僕が・・・地球防衛軍に・・・?」
愛莉「うん。それが、私の望むかっこ良い兄さんなの。」
上川「そう・・・。でも、無理だよ。僕のような弱虫が、
怪獣から地球を守る力なんて持てるワケがないんだ・・・。」
愛莉「そうだね・・・。現実の兄さんはそうだものね。」
そして、上川と愛莉は窓から外の方を覗く。
町は、とても寂しそうな雨が降り続けていた。
上川「止まないね・・・。雨。」
愛莉「うん・・・。明日、
家族で遊園地に行こうと思ったのに。
・・・・・そうだ!」
その時、愛莉は何かひらめいたようにどこかへ走る。
そして、すぐに戻ってきて、何かを持って来た。それは、
顔にグルグルした目を描いたてるてる坊主であった。
上川「何これ?」
愛莉「私が作ったの。
これを吊るして、晴れてもらうの。」
愛莉はそのてるてる坊主を吊るした。
愛莉「これできっと晴れるハズよ!」
上川「本当かなァ・・・・。」
次の日。雨は止み、輝ける太陽が晴れた。
上川「凄い・・・!本当に晴れるなんて。
このてるてる坊主、まるで魔法を持っているみたいだ。」
愛莉「だって、私が願いを込めて作ったもの。
世の中が幸せであるようにと・・・。」
上川「世の中が幸せ・・・・。ねェ。愛莉。もし、
できれば。そのてるてる坊主を、僕にくれないかな?」
愛莉「え・・・?どうして?」
上川「・・・・僕は今、決めたんだ。僕、
愛莉の思うかっこ良い兄さんになろうと思うんだ!
それには、
世の中を幸せにするてるてる坊主が必要だと思う。」
愛莉「兄さん・・・・。うん!わかった。後であげるね。
あげるから、絶対にかっこ良い兄さんになってね!」
上川「うん!約束する!!」
上川と愛莉は指切りをした。こうして、
上川はこれ以降、てるてる坊主を持ち続け、
勇気を出して、いじめっこをやっつけたと言う。
それから、色々な事があったが、上川はこれらを乗り越え、
大人となり、ついに地球防衛軍に入って、
怪獣から人々を守り続けていた。
そして、現在。
灰間「なるほど・・・。妹が作ったてるてる坊主・・・。
そして、彼女の見た夢が、
上川隊員を動かしたっつーワケですね。」
上川「そう・・・・。このてるてる坊主を見ると、
自然に勇気が湧いちゃうんだ。これのおかげで。
さらに、妹があの発言をしたおかげで、僕は強くなったんだ。
そして、魔族の出現により、
BARのメンバーに選ばれて、今に至るってワケさ。」
灰間「そうですか。」
上川「うむ。もう雨は降らないだろう。戻ろう。灰間君。」
バルターボはBAR基地に戻り、それぞれ帰宅した。
だが、次の日。ある街で突然、雨が降り始めた。そこに、
アメゴンが出現し、その街を破壊しようと暴れる。
アメゴン「キッギャウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥン」
暴れるアメゴンによって、次々とビルが破壊されていく。
そこに、バルワンダーDXが駆け付ける。だが、
その時に雨が急に止み、アメゴンは消えてしまった。
上川はマンションで自分の部屋に戻った。
上川「また、雨が降り、魔獣が現れてしまった・・・。」
そして、
上川はグルグルしている目のてるてる坊主を手に持つ。
上川「いよいよ、こいつを吊るす時が来たね・・・。
これさえあれば、雨など起こらないハズ。そうすれば・・・!
妹の作った、僕の勇気の証よ。どうか、導いてくれ!」
上川はてるてる坊主を吊るし始めた。
上川「これできっと晴れるハズ。何故なら、
昔のように晴れた事があるんだから・・・。」
上川は信じた。この妹の作ったてるてる坊主が、
魔獣の出る雨を降らせない事を。もし、このてるてる坊主が、
世の中の幸せを願うなら、
きっと雨は降らせないと思っていた。
だが、次の日。また、雨が降り出し、
アメゴンが現れた。
バルワンダーDXがレーザーバルカンで攻撃している。
操縦しているのは、灰間、日下部、叶野、上川である。
叶野「早く魔獣を倒すんだ!!」
上川(そんな・・・!また、雨が降るなんて・・・。
あのてるてる坊主を吊るしたハズなのに、
雨が降るなんて・・・・!?)
上川は心の中で物凄い動揺をしていた。
アメゴン「キッギャウウウウウゥゥゥゥゥゥン」
アメゴンは口から白いガスを吐くが、
バルワンダーDXはそれを避け、電気ビームを発射。
これを受けたアメゴンはダメージを受ける。
アメゴン「キッギャウウウウゥゥゥゥゥゥン」
日下部「このまま一気に・・・・!」
その時、雨がまた止んでしまう。アメゴンは消えてしまった。
灰間「くそっ!!また逃げやがったか・・・・!」
上川(・・・思い出した。中学3年の頃、
また大雨が降って、あのてるてる坊主を吊るしたけど、
その次の日にまた大雨が降った。つまり、
もう、てるてる坊主には魔法がかかっていないんだ・・・。
普通になってしまったんだ。・・・・でも、
それでも、僕は、そのてるてる坊主の事を・・・!)
BAR基地に戻った隊員たち。
灰間「畜生!!もう少しなのに、
雨が止んで逃げられちまった・・・!もしかして、
魔族が雨を操ってるんじゃねェだろうな!?」
灰間はテーブルの上を叩き、苛立っていた。
日下部「・・・でも、そんな魔族のメンバーは、
いないらしいわ。懸命にパトロールした結果、
魔族の反応はないらしいし・・・。」
叶野「だとしたら、自然によるものか。自然は、
我々の勝利を何故、邪魔をするのだ・・・!?」
上川「・・・・・っ!」
暗いムードの隊員たちに大神が、
喝を入れたような声で励ます。
大神「おどれら!諦めるんじゃない!!今、
緒川たち科学班が全力を尽くして、
レインマターの開発を進んでいる。
あと一週間で完成するとの事じゃ!それまで、
被害を最小限に食い止めるんじゃ!!」
隊員たち「了解!!!!」
灰間(あと一週間でレインマターの完成・・・!
それまでに、ペンダントよ。できるだけ、
雨が降る時間を予知してくれよ・・・・!)
数時間後、病院に来た。
上川は貴翔や両親のいる病室に来た。
貴翔「あ。お兄ちゃん・・・。」
上川「貴翔君。どうだぃ?パパとママの様子は・・・。」
貴翔「うん。生きているそうなんだけど。
まだ眠っているんだ。いつになったら、
起きるのかなァ・・・。」
貴翔は悲しそうであった。父と母が生きているものの、
まだ目覚めていないのだ。いつになったら、
目覚めてくれるのかと心配していたのである。
貴翔「このままずっと起きなかったら・・・。
本当に死んでしまったら、僕は。僕は・・・・。」
貴翔は泣きそうになった。その時。
上川「・・・・貴翔君。これをあげるよ。」
上川はグルグルしている目の、
てるてる坊主を貴翔に見せる。
貴翔「何?このてるてる坊主・・・・。」
上川「このてるてる坊主は、僕の妹が作った、
魔法のてるてる坊主なんだよ。」
つづく
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