大神「遅いやないの?上川。」
上川「すみません。知り合いが怪我をしたと聞いて・・・。」
叶野「他人に気遣うのは評価するが、
BARの仕事に遅れは許されないハズだぞ?」
上川「ごめんなさい。叶野さん・・・。」
灰間「もうすぐ、大神隊長と緒川さんが、
例の魔獣について説明するぜ。」
日下部「さァ。席へ。」
上川「う、うん・・・。」
こうして、隊員全員が席に座った。そして、
大神と緒川が説明を始める。
大神「昨夜、四羽街を襲った魔獣の正体は判明された。」
スクリーンでは四羽街で暴れたアメゴンの写真が映された。
上川「・・・・・っ!?この魔獣が・・・!」
大神「この魔獣は、雨の時だけに姿を表す事がわかったけ。
故に、この怪物は雨以外の時は全く現れないんじゃ。」
緒川「科学班が調査した結果、あの魔獣の身体には、
水蒸気に近い物質でできているらしいの。従って、
晴れている時は、その身体の物質が蒸発し、
姿が消えて活動できない状態になってしまうわ。
でも、雨が降ると、物質が具現化し、
姿を表して活動を始めるわ。」
日下部「なるほど。
今回の魔獣は雨で動く魔獣と言うワケね。
我々が攻撃を続けても雨が止むと、
倒せずに逃げられてしまう恐れがある。
昨日のティアーズが倒そうとした時のように・・・。」
叶野「しかも、今月は梅雨だから、雨がよく降るだろう。
魔族め。この時期を狙った作戦で仕掛けて来たな・・・!」
灰間「しかも、いつ雨が降り、いつ止むかわからねェ。
こいつは天気予報に任せるしかねーな・・・。」
日下部「馬鹿。そんなニュースに頼ってんじゃないわよ。
防衛軍の気象調査機関に、
任せればよろしいでしょうか?」
灰間「お前も軍事に頼ってんじゃねーよ・・・。」
灰間が日下部に聞こえないようにぼそっと言葉を出す。
日下部「何か言ったかしら?」
灰間「何も言ってねェよ。」
大神「喧嘩わそれくらいにせんかぃ。確かに、
いつ雨が降って、出撃しても、
すぐに止んで逃げ出してしまう恐れがある。
確かに、魔族は厄介な魔獣を造り出したわぃ。
そこでじゃぃ!」
緒川「我々科学班は、
レインマターと言う兵器を開発する事にしたわ。
レインマターは、雨雲を造り出すガス兵器で、そのガスには、
気温が下がり、
凝結した水蒸気が大量に含まれているわ。
その雨雲に似たガスを噴出して、雨を呼ぶ事が可能よ。
これをバルワンダーDXに取り付けて、
発射できるようにしておきます。」
日下部「いつ、完成するの?」
緒川「・・・・あまりに大変な開発だから、
数週間くらいはかかるわ。
けど、我ら科学班は総力をあげて、できるだけ短い期間で、
造り上げてみせる!」
大神「それまで、
我々が魔獣の攻撃をできるだけ防ぐんじゃ!
なお、レインマターが完成し次第、バルワンダーDXは、
人間が一人もおらん山地で雨を造る。そして、
魔獣が現れたところを、
他のバルワンダーが総攻撃で倒す。
名付けて、雨降りアタック作戦!!この作戦が、
我々の勝利のカギを握る・・・!
成功のために、頑張るんど!!!」
隊員たち「了解!!!」
灰間と上川はバルターボで街を走っていた。
もちろん、上川がバルターボを運転している。
上川「・・・・っ。貴翔君・・・・。」
灰間「どうしたんすか?上川さん。」
上川「・・・あの魔獣のせいで、僕の知り合いである、
貴翔君の両親が怪我をしちゃったんだ・・・・。
あの雨のせいで、魔獣が現れて・・・・っ!」
灰間「そうですね。魔族の野郎。
めんどくせェやり方で・・・!
いつ雨が降るかわからない・・・。それが、
恐怖と不安になるなんて、誰が予想したんだろうな。」
上川「ああ・・・。いっそ、
雨がなんて永遠に降らなきゃ良いんだ。
雨さえ降らなきゃ・・・・。そうだ!
このてるてる坊主なら・・・。」
上川はそう言うと、どこからともなく、
あのてるてる坊主を出した。
グルグルしている目だけが書かれたてるてる坊主が。
灰間「何ですか?その変なてるてる坊主わ。」
上川「これはね、僕の思い出の象徴なんだ。」
灰間「思い出の象徴?」
上川「うん・・・。こいつが、
僕に防衛隊に入るきっかけを与えたんだ・・・。
ある意味、僕の戦う力とも言えるかもね。
こいつがなければ、
僕は今頃、どうなっていたんだろう・・・。」
18年前。その頃の上川はまだ中学1年生であった。
その頃の上川は現代よりさらに気弱で、
いじめられてばかりで、泣いてばかりであった。
家に帰って、自分の部屋ですすり泣く上川。
少年時代の上川「う・・・。ぐすっ!いうぅぅ・・・!」
そんな上川の前に、一人の少女が来た。
少女「五郎兄さん。
またいじめられたくらいで泣いてるの?」
上川「・・・・っ!?あ、愛莉か・・・。」
少女の名は上川愛莉。
上川の妹である。小学5年生である。
愛莉「全く。もう中学生なのに、
相変わらずなさけないわね。」
上川「ごめん・・・。こんな駄目な兄で。」
愛莉「ううん。良いの。だって、私。
そんな駄目な兄さんの方が可愛く見えるし。でも、
時には怪獣から地球を守る、
かっこ良い兄さんが見たいな。」
上川「かっこ良い兄さん・・・・?」
愛莉「うん。私ね。夢を見たの。大人になった兄さんが、
地球防衛軍の兵士になって、
怪獣から私を守るために戦ってくれた夢を・・・。」
つづく
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